社長に求愛されました


それは決して篤紀が嫌なのではなく。

「とりあえず、社長は今から仕事行ってください」

時間の問題だ。
今は12時少し前。普段だったら働いている時間だし、篤紀は今日有給というわけではなく、仕事を部下に振り分けてきた状況だ。
そんな篤紀と日中からいちゃいちゃしている場合ではないというのがちえりの主張だった。

「お弁当食べてからでいいですから、会社に戻って午前中のわがまま行動を綾子さんたちに謝って、午後、きちんと仕事してきてください」

そんなん明日やる。明日に倍でも三杯でもやる。徹夜とか俺全然するし!
そう言いかけた篤紀は、さきほど仕事をきちんとやると約束をした事を思い出し、ぐっと押し黙る。

その後も少し、納得のいかない顔でどうにかちえりを説得できないかに頭を悩ませていたのだが。
真面目なちえりにはもう何を言っても無駄だと悟り、これからの甘い時間を諦めてため息を落とした。


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