社長に求愛されました


午後の予定を聞かれ、ちえりがななめ後ろにあるホワイトボードに視線を移す。

社員の名前とその日の予定が書きこまれているホワイトボードは、毎朝出勤して一番にそれぞれが記入するものだ。

篤紀の予定は……と確認しようとした目に映った文字に、ちえりが口を開けたまま眉を寄せる。
黒崎、の文字の隣、午前中の欄は“高瀬を発見次第出社予定”と書かれていたからだ。
字からして綾子だと気づき、ちえりは綾子をちらっと見てから、気を取り直して受話器を持ち替え、保留ボタンを押した。

「社長、午後は何か外出予定はありますか?」

お昼の時の約束が効いているのか、デスクに向かい真面目に書類に目を通している篤紀に声をかける。
篤紀は顔を上げると、あるわけねぇだろと顔をしかめた。

「今日は定時で終わりにしておまえんち行く約束なんだから」
「今から白石出版の社長と和美さんがいらっしゃるそうなんですけど……来て頂いても構わないですか?」

まるっきり無視された事にもだが、今から来るらしいアポなしの訪問者に篤紀が顔を眉を寄せる。





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