社長に求愛されました


「は? 白石さんが何しに?」
「土曜日のパーティのお礼らしいです」
「なんだよ、お礼って。特に会費もねぇパーティだったし、俺たちはただ飯ただ酒だったのに」
「さぁ……。私に言われても。でもいらっしゃりたいって事なんですけど……」

ちえりも確かにおかしな話だなとは思うものの、いつまでも「どういうつもりだ?」「さぁ。私に聞かれても」という会話を続けているわけにも、和美に保留メロディーを聞かせておくわけにもいかない。

「どうしましょうか」
「まぁ、大よそ見当はつきますけどね。
どうせ、この間のパーティーで思ったよりも黒崎社長に近づけなかったから気を取り直してってところなんじゃないですか?」

横から飛んできた綾子の助言を、篤紀も、そしてちえりも、まぁそういう事だろうと素直に受け入れる。

「……面倒だしこれから外出予定だってしとくか。どうせ仕事の話じゃねぇし」
「嘘つくんですか?」
「ああ、嘘ついてくれ。今から出るって」

堂々と嘘をつくのはあまり気は進まないが、仕事には関係ない和美まで連れてくるという時点で、少なくとも大事な仕事の話ではないという事だ。
それがちえりにも分かったため、篤紀に言われた通り告げて謝ろうと通話を戻した途端、和美の方から話しかけられた。


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