社長に求愛されました


『あ、ごめん。高瀬さん。保留になってる間に着いちゃった。今駐車場だから、すぐ行くわね』

え……っと驚きの声をもらしたちえりを気にするでもなく、電話は切られ、ツーッツーッという音が空しく響く。

「社長、白石さんなんですけど、なんかもう駐車場に着いちゃったからすぐ来るらしいです……」
「は?! アポなしで?」
「はい……。とりあえず、応接通しますか?」

受話器を置きながら聞くちえりの隣から、綾子が「それとも居留守使いますか?」と篤紀に聞く。
ふたつの選択肢を与えられた篤紀は、しかめっ面のまま少し黙った後、応接室に通す方を選んだ。

その理由は、会わない限り、明日も明後日も来そうだからというもので、まぁそれもそうだとちえりも綾子も納得する。
あのレセプションパーティの和美の様子を見ている者なら恐らく全員が頷く。愚問だ。

「つーか、仕事にそこまで恋愛事情持ち込むなよ。イライラすんなー」

心底面倒くさそうにぼやく篤紀に、事務所にいる社員全員からの「おまえが言うなよ……」という視線が集まったところで、ピンポーンと能天気な音のインターホンが鳴った。

ちえりがドアホン越しに白石と和美の姿を確認してからドアを開けて応接室に通す。
それから篤紀も部屋に入れて、お茶の準備をするために応接室の隣の給湯室に移ると、綾子がその様子を窺いにきた。




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