社長に求愛されました


「その、とても可愛い子ですし、黒崎社長が骨抜きにされてるんじゃないかと、和美とも話したりして……。なぁ、和美」

自分での攻撃を諦めたのか、白石が和美に話を振る。
どうやら本人を前にちえりを悪く言う事に罪悪感を覚えたらしい。

まさに骨抜きにされた状態の白石は、お茶を出したちえりに照れた笑顔を浮かべてありがとうとお礼を言ってそれに口をつける。
目の前でそんな様子を見ていた篤紀にとってそれは当然おもしろくなく、俺のなんだから極力見るんじゃねぇと内心毒づいていたのだが。

白石からちえりへの誹謗をバトンタッチされた和美に話しかけられ、仕方なくそちらに視線を移した。

「そうなんです。先日のパーティーにまで高瀬さんを連れて来たりなさったから、一部の招待客に変な誤解を招いてるってご存知ですか?
バイトなのにあそこまで可愛がられているって事は黒崎社長の愛人なんじゃないかって、面白半分に噂されてるんですよ」
「愛人ですか。まだ結婚もしていないんですから、噂してた人たちも素直に彼女とでも言ってくれないものですかね」
「パーティーにきた人たちは、ほとんどの方が、黒崎社長がプリンスホテル・Kの御曹司だって事はご存じですから。
まさかバイトの子を捕まえて彼女とは言えなかったんじゃないかしら」





< 166 / 235 >

この作品をシェア

pagetop