社長に求愛されました
ちえりを好きだと言う篤紀を前に、恋心を今更告げるなんていう選択肢は、プライドの高い彼女にはないのだ。
それを予想して、和美が言い出す前にちえりとの仲をカミングアウトした篤紀の作戦勝ちだ。
まさか和美も、篤紀ほどの男が一年以上に渡る自分の片思いをこうやすやすと口にするとは思っていなかった。
和美にとっては片思い事態恥ずかしく思っていたし、告白も男の方からされないと気が済まない。
だからこそ、篤紀を想いながらも自分からはハッキリとした気持ちは告げずにいたのだ。
父親の協力も借りながら徐々に周りを固めていき、篤紀から告白させようとそういう計画を立てて……今日はパーティに続く二つ目の作戦を実行する予定でいた。
このまま夜食事に誘い出し、途中で父親に席を外してもらうつもりだった。
それなのに……。
片思いはカッコ悪く、恥ずべきこと。自分に魅力がないと言ってるも同然。
そんな風に思っていたのに、一年以上の片思い宣言を堂々とし、ちえりを愛しそうに見つめ微笑んでいる篤紀は、悔しくなるほど格好よく……今まで見たどの表情よりも魅力的だった。
……自分の負けだ。
頭に勝手に浮かんだ敗北宣言に、和美はぎりっと奥歯を噛みしめる。
そんな和美の隣で、白石が「でも今までそんな話はしなかったのに……」と驚いたように口にした。