社長に求愛されました
いつもは甘ったれた事ばかり言っているくせに、たまにこういうドキっとさせる事を言うから困る。
ちえりはそんな事を思いながら、熱を持ち始めた頬を隠すように俯いた。
篤紀が誰と付き合って結婚したいのか。
そう言われてここで自分の事だと思うなんてうぬぼれているのかもしれないが、ちえりの場合はそうではない。
篤紀の好意は、言葉でこそ素直ではないものの毎日溢れでているし、それは第三者から見てもあからさまというか、疑いようがないものだった。
だから、もちろんちえりもそれに気づかないハズもなく。
その上こんな真剣な顔で見つめられてしまえば、ちえりも誤魔化せないでため息をつくしかなかった。
隠そうとしてくれればいいものの、篤紀自身まったくその気がないようで気持ちを素直に行動に移す。
出逢ってすぐの頃から今までずっと……そして恐らくこれからも。
そんな篤紀を前に、ちえりはこれからの事を考えると頭が痛かった。
隠してくれればよかったのに。気づきたくなんかなかったのに。
そんな事をちえりが午前中だけで何十回と考えたかを篤紀は知らない。