社長に求愛されました
「高瀬さん、この間は言い過ぎたわ」
突然の和美の発言に、ちえりは戸惑いながらも「いえ……」と首を振った。
謝られた事が意外だったようで、キョトンとしてしまっているちえりに、和美が苦笑いを浮かべる。
「ちょっと牽制するつもりが、高瀬さんが何も言わないからつい止まらなくなったの。
悪意を善意で返されちゃうと、悪意を悪意で返されるよりも性質が悪いって初めて知ったわ。
黙ってただ耐えてる高瀬さんに、どんどん悪態ばかりついちゃって……」
見苦しい事しちゃったわ……と反省するように言う和美を見て、ちえりはまた首を振った。
「でも、和美さんの言っていた事は正しかったから。
気にしないで」
そう微笑むちえりに、和美はパーティーで自分が言った事を思い出してみる。
ちえりに言った事を内容別にざっくりと分ければ、篤紀とちえりでは立場が違いすぎるし周りがよく思うハズがないと言う事と……ちえりのバイトという立場や生い立ちに対しての冷罵だ。
確かに事実ではあったが、ロミオとジュリエットを例えにあげてまで非難した事を思い出すと、和美自身でさえ言い過ぎたと思うのに、それをちえりは正しい事だからと微笑んで許すというのだ。