社長に求愛されました
「ロミオがあまりにカッコよくて情けないから、残してなんて死ねませんよ」
確かにちえりに先立たれたら速攻で後を追いそうだ。
そう思い、危ういなぁ。分かっていたけど危ないなぁ。としかめた顔に笑みを浮かべた綾子が隣に視線を向けると、口元を片手で覆って顔を赤くする篤紀が映った。
どうやら今のちえりの言葉にノックアウトされたらしい。
「高瀬のおちゃめさに打ちのめされたのは分かりますが、情けないって言われてますけど」
「それがどうした」
「……いえ。社長がいいならそれでいいですけど」
「いいに決まってんだろ。あんな顔して俺が死ぬまで一緒にいるって言われたんだから」
たかが20歳のちえりに28歳のいい大人の篤紀が振り回された挙句、ちょっと可愛い事を言われただけで顔を真っ赤にするのは綾子的にはどうかとも思うのだが……。
第三者の立場からすれば、かなり面白い見物ではあった。
一週間のうちに、篤紀が何度ちえりに赤面するかで、また他の社員と賭けようか。それとも、ちえりに上司命令として何か篤紀が動揺したり喜んだりしそうなセリフを言わせてその反応をクイズにしようか。
色々な悪だくみを頭に浮かべながら、未だ耳まで赤くしている篤紀に綾子が笑った。