社長に求愛されました
このソファーでテレビを見ながらくつろいだり、仕事関係の本に目を通しながら、気晴らしにできそうな料理を探してパラパラと料理本をめくったりしているのだろうか。
たまに作ってきてくれる、やたらと手が込んでいそうな料理も、この本のどれかに載っていたりするのかもしれない。
だらだらとソファーで横になる篤紀が目に浮かぶようで、ちえりの表情から自然と笑みがこぼれる。
この部屋は確かに普通の一人暮らしする部屋とはかけ離れているし、場違いだとも思うけれど……。
篤紀の気配があるのを感じた途端、居心地がよくなるから不思議だった。
「ん」
今までキッチンで何やらカチャカチャとやっていた篤紀が、テーブルの上にふたつのグラスを置く。
「あ、すみません。アイスティーですか?」
「そう。おまえコーヒー好きじゃないし、酒飲めないし」
「コーヒーはあまり好きじゃないだけで飲めますよ」
バカにしたように笑う篤紀についムキになってちえりが言うと、篤紀はちえりの隣に座りながら、今度は優しく笑いかける。