社長に求愛されました
「社長は、どうして私なんかが好きなんですか?」
自分が入れるからという理由で毎日二杯もコーヒーを飲むほど夢中になっていてくれるのはもちろん嬉しい。
けれど、ちえり自身、篤紀が一体どういう理由で想ってくれているのか、どこを気に入ってくれているのかがどんなに考えても分からない。
分からないまま、それでも篤紀は全身で想いの大きさを表して教えてくれるから、篤紀は一体自分なんかのどこを……と不安になる事はないのだが、ずっと気になる事ではあった。
そんな質問をぶつけられた篤紀は、今までちえりとこういう話をしてきた事がないだけに、答えに迷っていた。
今まではどちらかと言うと、ちえりの事情も考えて避けていた話題。
それを急に聞かれても、うまい言葉が見つからないのだ。
午前中ちえりを連れ戻そうとただ必死にした告白は、自分でも情けないものだったという自覚がある。
だからこそ、今度こそバシっと決めてカッコよく決めたいのだが……。
そんな思惑から、キザな台詞からシンプルな台詞までを頭の中に巡らせ、どんな風に答えるのをちえりが望んでいるかに悩み黙っている篤紀。
しばらくは大人しく返事を待っていたちえりだったが、30秒が経とうとしたところで、苦悩している様子の篤紀に苦笑いを浮かべた。
「もしかして、ないんですか?」
「そんなわけねぇだろっ」
「でも、全然言わないし」
「もちろん、あるけど……そうじゃなくて、なんつーか……」