社長に求愛されました
「社長の隣を望む事は、わがまま以外なんでもないって思ってたハズなのに……社長が隣にいてくれないと、私は真っ暗な世界に放り出されて何もできないんです。
それを思い知って……そんな時社長が一緒に不幸になろうって言ってくれたから、私は救われました」
そう微笑むちえりはあまりに綺麗で、篤紀は思わず言葉を失う。
今まで迷惑がられるほど一緒にいてたくさんの表情を見てきたが、こんなにもまっすぐな微笑みを向けてくれた事はそれまでなかった。
見た人間までもを幸せにするような、純粋でくったくのない微笑みを浮かべるちえり。
そんなちえりの後ろの背もたれに、篤紀が手をつき……ゆっくりと近づく。
「おまえ、情けないって言ってたろ。会社で」
「情けなくて、放っておけないって言ったんですよ」
「まぁでも、一緒に不幸になろうなんて告白はないよな。
不幸になろうって言われて救われたなんて言うヤツも珍しいけど」
段々と近づく篤紀にドキドキしながらも、ちえりがくすっと笑う。
片手でソファーの背もたれを、もう一方ではちえりの向こう側にあるソファーに手をついた篤紀に逃げ場を奪われたちえりは、じっと篤紀を見つめ……そっと目を閉じた。