社長に求愛されました



「不幸になんかしねぇよ」

そんな言葉が聞こえたや否や、唇が触れる。
触れるだけのキスをしてから一度離れた唇に、ちえりがゆっくりと目を開けると熱のこもった瞳と目が合った。

どくんと音を立てて大きく跳ねた心臓に身体がすくむ。

「今日……泊まってけって言ったらどうする?」

驚いたちえりが、えっと声をもらすと、篤紀は、ああやっぱり間違えたと前言撤回する。
それから、ちえりの顔色を窺うような顔で言い直す。

「今日は帰さないから」

かぁ……と顔を赤くしたちえりに、尚も近い距離にいる篤紀が「嫌か?」と聞く。
なんだかいつもの篤紀らしくない言葉にドキドキと緊張しながら、ちえりが小さな声で答える。

「嫌、じゃないですけど……。でもなんか、社長らしくないですよね?」

いつもは弱気なのに、なんで今はやけに強気なんだろう。
そう思い聞くと、篤紀がふっと微笑む。

「井上に言われたんだ。俺がもっと強気にいかないとちえりは俺のモノにならないって。
だから……ちょっと強気にいこうと思って」
「強気にって、どういう風に?」
「え、だからこう……強引に」

具体的にどう強気でいくかを考えていなかった篤紀は、ちえりに聞かれて少し焦っているようだった。
そんな、いつも通り弱気な篤紀にふっと微笑んだちえりが、篤紀に近づき唇にちゅっとキスをする。


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