社長に求愛されました


「ん……っ」

緊張しているし、動悸なんじゃないかと心配になるほど心臓がバクバク動いているのに、ずっとされ続けているキスのせいで頭はぼんやりしている。

そのギャップに戸惑いながらもただキスに応えていると、やっと唇を離した篤紀が少し離れ……上からちえりを見下ろす。
今までのキスのせいで濡れている唇と、熱のこもった瞳。
そこにいつもは感じない大人の男の色気みたいなものを感じてしまい、ちえりがかぁっと顔を赤くする。

「……そんな顔で、あんまり見ないでください」
「そんな顔? ……おまえもしかして俺の顔嫌いなのか?」
「そうじゃなくて……っ、今の社長、なんか、色っぽい顔しててドキドキしちゃうから……。
社長の顔を嫌いな人なんているわけないじゃないですか」
「……本当にそう思うか?」
「今更ですよ。百戦錬磨できたんでしょ? わざわざ私に言われなくても分かってるんじゃないですか?」

ちえりからすれば、何を当たり前の事を、といった感じに答えたのだが、篤紀は嬉しそうに微笑む。

篤紀ほどの外見の持ち主でも何度言われてもカッコいいと言われるのは嬉しいのだろうか。
そんな風に思ったちえりが聞くと、そうじゃねぇよと笑われる。


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