社長に求愛されました
「おまえに言われる事に意味があるんだろ。
……おまえは違うのか?」
「え?」
「俺に可愛いだとかキレイだって言われるのと、他の男にそう言われるのはまったく一緒か?」
「一緒じゃないですけど……私は社長みたいに日常的にそういう事言われるわけじゃないしよく分かりません」
謙遜しているわけではなく、恐らく本心からの言葉なんだろう。
篤紀ははぁ……とため息をつきながら、ちえりの無頓着さと鈍感さに呆れて不安になる。
「おまえはもう少し自分の事を知った方がいい。この間のパーティーでだって、何人かの男は確実におまえを狙ってたんだからな」
「でも誰にも声かけられませんでしたけど」
「それは俺が威嚇してたからだ」
「威嚇……?」
「とにかくだ。おまえは外見的にも可愛いし内面も合わせて魅力的だって事を言いたかったんだよ。
だから……自分なんかとか言うな」
真っ直ぐな瞳に射抜かれて言葉を失ったちえりの唇を篤紀が奪う。
閉じたちえりの瞳から、自然と涙が伝っていた。
自分の事をこれほどまで想ってくれる篤紀が嬉しくて。
今まで、洋子たちにも心配してもらった事はあるし、よくしてもらってきた。
それでも、ここまで想ってくれた人はいなかったように思う。