社長に求愛されました


ちえりが目を覚ますと、隣にはまだ眠っている篤紀がいた。
ソファでの情事の後、なだれ込むようにベッドに移り、軽い抵抗は見せたものの却下されまた色々とされた事を思い出し、ちえりの顔がかぁっと赤くなる。

とはいえ、恥ずかしさはもちろんあるものの、終始篤紀の想いの大きさを感じられるような行為は嬉しくもあり、顔が自然とにやけてしまう。
ちえりが顔を両手で押さえながらも幸せな気分に浸っていると、もぞもぞと動き出した篤紀が伸ばした腕に抱き寄せられた。

『社長……?』
『ん?』
『起きてたんですか?』
『今な。そしたら目の前でちえりが可愛い顔してニヤけてたから。
……何考えてあんな顔してたんだ?』

ぎゅっと抱き締めながら聞いてくる篤紀に、本当の事なんて言えるハズのないちえりが『ええと……』と嘘の答えを探すも。
『昨日の夜の事?』と、すぐに当てられてしまう。

『ち、違います……っ』
『なんだ、違うのか。昨日の夜、おまえがもういっぱいいっぱいだと思ってあれでやめたのに遠慮する事なかったか』

不吉な事を呟いた篤紀に眉をしかめるや否や、体勢を変えられいつの間にか組み敷かれてしまう。
見下ろしてくる熱を含んだ瞳に、ちえりが目を逸らした。





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