社長に求愛されました
「多分、あっくんの意思じゃなくて、おばさんが言ったんだと思います。
私が今まで誰も好きになった事ないって知ってるから、心配したのか丁度いいって思ったのかは分かりませんけど、じゃああっくんと結婚すればいいじゃないって軽い感じで。
それを、あっくんがまぁ別にいいけどって」
「別にいいけどって、その子、意思とかないの?」
「ぼんやり生きてる子だから、どうでもいいみたいです。
お弁当屋さんも……多分、あっくんが引き継いだら潰れるでしょうね……。
努力とか向上心とかまったくない子だし」
「つまんない男ね」と嫌悪感露わに言った綾子が続ける。
「つまり、お弁当屋さんのためにも、高瀬みたいなしっかりものと結婚させちゃいたいわけね。
しかも高瀬なら嫁姑問題もないし。
でも、そんなでくのぼうみたいな男押し付けられたって高瀬が苦労するだけじゃない。
おばさんって、高瀬の事だって可愛がってくれてるんでしょ? それなのに自分の息子とはいえそんな男と結婚させようとするっておかしくない?」
「んー、でもなんだかんだ言って、あっくんの事は可愛いに決まってるし」
「息子可愛さにって事? それにしたって話がぶっ飛びすぎてるじゃない。
……で、どうするの?」
トレーにコーヒーの入ったカップを乗せていたちえりが、手を止める。
そして、目を伏せ少し考えた後、視線を上げた。