社長に求愛されました


他の社員は10時休憩で雑談が始まり盛り上がっている。
話題の中心は今朝電撃入籍が発表された女優で、綾子を中心にその女優が妊娠してるか否かの下世話な賭けが始まっていた。
その様子を背中で聞き、誰もこちらを気にしていない事を確認しながら、ひとつ残ったコーヒーを篤紀のデスクに置く。

そして、トントンと動かしている手にそっと触れた。

驚いた顔で見上げる篤紀に、ちえりが申し訳なさそうに微笑む。

「心配ばかりかけてごめんなさい。でも……私を信じて、待っていてくれませんか?」

その言葉に、篤紀は瞬時に驚いた感情を消し、ちえりと同じように困り顔で笑った。

「おまえの事を疑ってるわけじゃねーよ。もちろん、邪魔したりもしない。
俺がおまえの事心配するなんて日課みたいなモンだし気にすんな」

ちえりが気にしないようにと言った強がり。
それに気付いたようにちえりが笑う。





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