社長に求愛されました


「歩もね、試しに話したら別にいいって言うのよ」
「あっくんは多分、誰でもいいんだと思うよ」
「でも、嫌いな相手だったら嫌がるでしょう?」
「まぁ……それはそうかもしれないけど」
「それに、歩はぽやーっとしてるから、あの子のところにお嫁にくる子はしっかりしてないとお店が潰れちゃうのよ。
その点、ちえりちゃんならばっちりだし」
「でも……」
「ほら、お店の経営もね、正直傾いてるじゃない?
だから私たちの代で終わりにしようとも考えてたけど……もしもちえりちゃんが本当に歩のところに来てくれるなら私たちももう少し頑張ってみようと思って少し気持ちが明るくなったのよ」
「気持ちが明るく……」

そう復唱したちえりが、苦笑いをこぼす。
歩との事を断りにきたが、洋子があまりに希望に満ちた表情をするものだから言い出しにくく、しかも間を埋めるように話し続けるため、話を切り出せない。

そうこうしているうちに、ちえりがお嫁にきたらどれだけ嬉しいかという事をこれでもかってほどに語られてしまい……言い出せなくなってしまって。





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