社長に求愛されました
「でも、ちえりちゃんにそこまで大事な人がいるなんて、おばさん気づかなかったわー。
ねぇ、その人ってどんな人なの? 付き合ってるのよね? 年上? 年下?」
あまりの切り替えの早さについていけず苦笑いを浮かべるちえりに、洋子が嬉しそうに笑みを浮かべたまま続ける。
「ずっと夢だったのよー、ちえりちゃんとこんな風に恋の話するのが。若い子の間では恋バナって言うんでしょ?
おばさんも若い頃は色々経験したし、これでもモテたし、ちえりちゃんの相談に乗るくらいならできると思うのよね。
ほら、実の親だと気恥ずかしいかもしれないけど、その点私なら大丈夫でしょう?」
ニコニコと本当に楽しそうにしながら聞いてくる洋子に、本当に歩との縁談の話はもういいのかとちえりが聞こうとした時。
居間と店を繋ぐドアをノックする音が聞こえた。
この家に、このドアをノックする人間などいないだけに、誰かと思いふたりが見ていると……。
開かれたドアの向こうに立っていたのは、篤紀で。
驚いたまま何も言えずにいるちえりに視線を向けた後、、篤紀が洋子に視線を移しぺこりと頭を下げた。