社長に求愛されました
決してうぬぼれているつもりはなかった。
でも、篤紀はそういう男なのだ。
とにかくちえりをよく見てくれていて……ちえり自身よりもちえりの気持ちを大事にしてくれる。
そういう想いの一途さと大きさに、ちえりは心打たれて、それまで貫いてきた意思を変えたのだから。
篤紀の優しさにきゅっと縮こまる胸を感じながらちえりが顔をしかめていると、視線の先で篤紀が洋子を見て口を開く。
「ちえりさんの言った通り、この話をしたのは今が初めてです。
実は、少し前からこの話は出ていたんですが、僕が驚かせたくて内緒にしていたので」
そう言い、ちらっとちえりを見た篤紀が続ける。
「元々、こちらの了解を得られれば問題なく進む話だったので、僕がただタイミングを計っていただけなのですが……。
今日の朝、ちえりさんに縁談の話があると聞いて……いても立ってもいられずに、すぐにこの話を進めるべく、父親に了承を得てきました」
それを聞いた洋子が、不思議そうに眉を寄せ篤紀を見る。
「あの……今朝、私が電話をかけた時、ふたりは一緒にいたという事ですよね?
出社前に電話をかけたつもりだったんだけど……もしかしてもう、仕事だったの?」