社長に求愛されました


実家からアパートまでの細い道。
いつもなら少し不気味にも思えたりするのに、篤紀が隣にいるだけでそんな気持ちは綺麗さっぱりなくなってしまうから不思議だ。
なんだかんだ言いながら、自分はもうすっかり篤紀に頼ってしまっているのだと思い知り、ちえりがもう一つ苦笑いをこぼす。

「本契約を結ぶ時にはおじさんも同席してもらわないとだから、後で都合がいい日と時間帯を聞いておいてくれるか?
店の都合に合わせるから」

篤紀の言葉に、ちえりが「あ、はい……」と答えてからじっと見つめる。

「なんだよ」
「いつから考えてたんですか? お弁当の注文の事。
私、全然知りませんでしたけど」

不貞腐れたような顔のちえりに、篤紀は困り顔で笑う。

「別にそんな顔されるような事してねーだろ。
俺から父親に頼み込んでこの話を通したって考えてるなら、違うからな。
父親から弁当の依頼先を探してるって話はもう随分前から聞いてたし。
……ああ、白石さんとこのレセプションパーティーん時にはもう知ってたな」
「そんなに前から? なんで今まで黙ってたんですか?
あ、うち以外にも候補があったとか?」


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