社長に求愛されました
「いや、話聞いた時点でおまえんとこに頼もうと思ってたから、父親にも俺が見つけるって即答してた。
けど、そん時は付き合ってもいなかったし、おまえに恩を売るみたいで嫌だったんだよ。
そしたらおまえ、きっと俺に対してどこか遠慮すると思ったから」
「おまえがおばさんに対してどこか遠慮してるみたいに」と付け加えられ、ちえりが黙る。
確かにその通りだと思ったからだ。
「おまえはそういうとこ敏感だし、今の状態だって俺の善意を受け入れてんのが不服そうなのに……これ以上なんかしたりしたら、善意でおまえを縛ってるみたいになりそうで嫌だったんだ」
「そうですね……。
そこまでよくしてもらったら、私はきっと社長に申し訳なくて頭が上がらなくなります」
目を伏せながら答えたちえりに、篤紀は「だろ」とふっと笑みをこぼす。
そして「それじゃ、嫌だったんだよ」と呟くように言った。
「俺はおまえがどうしても欲しかったけど、そんな事して手に入れたかったわけじゃねーから。
おまえの意思で、俺のところに来てほしかったから……だから、言うタイミングを計ってたんだ」
そう笑った篤紀に、ちえりが視線を移す。