社長に求愛されました
「だっておまえが信じろって言ったから」
その表情と言葉に、ちえりが言葉を失う。
確かに言った。
あまりに心配してくるから、信じて待ってて欲しいと。
でも……たったそれだけで、あれだけの言葉で?という思いが湧いてきて……信じられない思いが浮かぶ。
「おまえが言うなら、俺はそれを信じるしいくらでも待てる。
……まぁ、多少変な嫉妬して不安になったりはするけどな」
困り顔で微笑んだ篤紀が付け加えた言葉に、ちえりの胸を何か熱いものが襲う。
好きだとか、そういう恋愛感情に似ているのだが、でもどこか違う。
なんでこの人はこうも自分に絶対的な想いを寄せてくれるんだろうと呆れてしまうのに、それを含め、ただ愛しくて……愛しくて堪らない、そんな感情でいっぱいになった。
いつもいつも、想ってくれて。
いつもいつも、見ていてくれて、分かってくれて……必死になって守ってくれる。
そんな事知っていたのに、今更思い知り、そしてそれを堪らなく嬉しく思う。
あの時……辞表を書いた時。
追いかけてきてくれてよかった。
素直に、強く、そう思った。
あの時、終わらなくてよかった。今があってよかった――。