社長に求愛されました
本音を言えばまだ一緒にいたい。
けれど、そうしてしまえばきっと一緒に仲良く話すだけでは終わらない事は分かっていた。
昨日、ちえりの身体を知ってしまったからこそ……もう今まで効いていた理性はそこまでの効力を持たない。
今まで我慢に我慢を重ねてきたからこそ、もう歯止めが効かない事は自分でも分かっていた。
だから、ここで帰るのが一番だと思うのだが。
じっと見上げ可愛いお願いをしてくるちえりに、言葉が出てこない。
そんな篤紀を見つめていたちえりが、そっと篤紀の胸に顔を埋め、そして。
「手、出してください……」
小さな声ではあるものの、しっかりと言った。
いつものちえりからは考えられないような言葉に、篤紀が「ちえり……どうした?」と返すと。
ちえりは篤紀の胸に顔を埋めたまま答える。
「どうもしません……。ただ……」
「ただ?」
「篤紀さんが、好きなんです――」
ちえりの言葉は、篤紀にとっては殺し文句もいいところで。
ちえりに嫌われたくないからと抑え込んでいた想いは一気に解放され、まっすぐにちえりに向かう。