社長に求愛されました
信じられないとでも言いたそうに揺れる瞳を見た篤紀が微笑み……ちえりにそっと手を伸ばし、頭を撫でる。
ちえりは、気持ちよさそうにとろんと表情を崩すものの、さきほどの発言が気になり、必死に篤紀を見てくる。
そんなちえりを、篤紀が自分の胸へと抱き寄せた。
ベッドサイドにあるライトだけが灯る薄暗い部屋。
ふたりの音以外、何も聞こえない。
「愛してる」
そう篤紀が言っても、しばらくじっとして反応を見せなかったちえりが、おずおずと手を篤紀の背中に回す。
そして、ぎゅっとしがみつくように抱き締めた。
「私も……愛してます。だから、ずっと……篤紀さんと一緒にいます」
返ってきた愛の告白に、これだから敵わないと、篤紀が苦笑いをもらす。
男の自分には分からないが、結婚なんて簡単に頷けるものではないハズだ。
特にちえりは、ずっと自分の家の事や篤紀の家の事を考え悩んできたのだから、結婚なんて言葉が出れば身構えてもおかしくない。
何かしら不安や心配事、考える事があるのは絶対だ。
それなのに即答に近い返事をしたちえりの覚悟を見せつけられ、ちえりの強さを思い知り、嬉しさが込み上げた。