社長に求愛されました
ちえり本人は自分の事には無頓着らしく、着飾る事もメイクさえもほとんどしないのだが、それでも可愛いと街で声をかけられる事も少なくない。
そんな状態だからこそ、篤紀も他の男に連れてかれて堪るか!と言わんばかりに過保護になっているわけなのだが。
「でも高瀬、前は社長と付き合ってるって事を頑なに認めなかったけど、最近は反論しなくなったわね。
どういう心境の変化なの?」
カップに入ったコーヒーを飲みながら聞く綾子に、同じようにカップを持ったちえりが苦笑いを浮かべる。
「別に好きに言わせておけばいいかなって」
「……それ、まるで私たちがおめでたい人たちみたいじゃない。
なんで一番年下の高瀬にそんな達観された見方されなくちゃならないのよ」
「っていうよりも、付き合ってるっていうのはまぁ……その事実かなと思ったんです。
確かに社長との関係は、付き合ってるって言葉に当てはまるのかなって」
淡々と説明するちえりに、綾子が眉間にしわを寄せる。
「なんだかぼんやりした言い方ね。だって、社長からは告白受けたりしたんでしょ?」
「いえ、受けてないです。社長は……私がそういう関係を嫌がってるって知ってるから」
「そういう関係って、ちゃんと付き合うって関係?」
不思議そうに聞いてくる綾子に、ちえりは困り顔で微笑みながら頷いた。