社長に求愛されました
ちえりの母親が亡くなったのは、ちえりが中学生の時で、そこからは、母の姉である洋子の家で育てられた。
洋子は夫と共にお弁当屋を営んでいて、ちえりと同い年の息子と三人暮らし。
生活にそれほどの余裕があるわけではなさそうだったが、それでも嫌な顔ひとつせず、ちえりと弟の慎一の面倒を見てくれここまで育ててくれた。
ちえりと慎一の高校の学費、そして慎一の大学の学費。
そしてそこに生活費となれば、いくら保険金が下りたからといって、賄いきれる額ではなかったハズなのに、ちえりや慎一が洋子にお金の事で何かを言われた事は一度もなかった。
ちえりの高校卒業後の進路についても、洋子は大学や専門学校を進めたが、ちえりは頷かなかった。
大学に高い学費を払ってまで学びたい分野もなかったし、なにより早く働きたかった。
ひとつ下の慎一は男だし、就職に幅広い選択肢ができるようきちんと大学に行った方がいい。そしてその学費を少しでも自分が出して洋子たちへの負担を減らしたい。
そう思ったからだ。