社長に求愛されました
「うん。確かそうだったわよ。どうかした?」
「いえ……なんか、小学校の頃にそんな名前の子がいた気がして」
「ああ、そういえば歳も同じくらいかも。
あれ、でも高瀬も会ったんじゃない? いつも社長に連れて歩かれてるんだし」
「はい。でもあまり顔見なかったので……」
「ふぅん。でも面白いわね。もしそうなら、同級生同士で社長の取り合いになるわけだし」
顎に手を添えて何やら怪しげな笑みを浮かべる綾子に、ちえりが、賭けの対象にしないでくださいねと先に釘を打つ。
「まさか。社長がどっちを選ぶかなんて賭けの対象にもならないわ」
「それより、みなさん行くんですか?」
「一応、事務所みんなでって話らしいから。
和美さんからしたら黒崎社長だけ誘って変に思われたらっていう気持ちからなんだろうけどね。
どうせ、あちらの社長は娘に言われるままなんでしょ。14人も呼んだら予算だってかかるのに……娘に甘いのね、きっと」
「なるほど……。なんか、社長ってみんなそういう人種なんですね」
自分のやりたい放題というかなんというか。
そんな事を呟いていると、篤紀に、聞こえてるからな!と咎められる。