社長に求愛されました



白石出版のレセプションパーティーは、13時から行われる。
そして篤紀がちえりの住むアパートのインターホンを押したのが10時。
今まで結婚式などドレスを着こむような場所に出席した事のないちえりは、ドレスを着るのにそんなに時間がかかるのかと顔をしかめながら篤紀を部屋に入れた。

「これがドレス、で、これが靴。あと鞄。
ドレスに着替えたら、俺が髪やってやるから」

ちえりが住むのは、1LKの決して広いとは言えない部屋だ。
8畳のリビングは1/4はベッド、2/4は家具で埋まっているため、篤紀がどさっと広げたものでもう床が見えなくなりそうだった。

「あ、そっか。髪もやらなきゃなんですね……。
え、社長、女の人の髪とかできるんですか?」

不器用そうなのに……と思っただけのつもりだったが、口に、もしくは顔に出ていたらしく、ベッドにドカっと座っている篤紀が苦笑いを向けた。
いつもなら顔をしかめるところかもしれないが、どうやら今日はドレスアップしたちえりと一日いられるからか機嫌がいいらしい。



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