社長に求愛されました
小さい頃から堪え性がない、飽きっぽいと親と担任に言われ続けてきた篤紀。
父親やその頃の担任が、今の篤紀のちえりへの態度を見ればもしかしたら涙を流して感動するかもしれない。
成長したんだなと。
それくらい、今の篤紀はちえりに関してだけは慎重になっていた。
篤紀にとって、今まで自分の思い通りにならないものはほとんどなかった。
というよりも、篤紀自身が何に対しても割と無関心だったため、そこまで強く望んだものがなかったという方が正しい表現かもしれない。
だから篤紀本人でさえ、自分は淡泊な人間なんだと、こういう感じで人生を過ごしていくのだろうと思っていたのに。
突然、バイトとして現れたちえりに、いとも簡単に無関心だった心は打ち壊された。
最初は随分可愛い顔してんなという印象だった。
そしてそれを追うようにして感じたのは、背も小さいし細いしちゃんと食えてんのか、大丈夫かこいつという心配。
別に小柄な女を見るのが初めてだったわけではなく、大丈夫かこいつと思わせる、気になって仕方ない何かがちえりにはあったのだ。