社長に求愛されました
チューブトップの部分には生地の淡いブルーが透けて見える程度の黒い上品な柄の入ったレースが縫い付けてあり、左胸の上には黒のバラのモチーフがついている。
胸から腰にかけてはタイトな作りだが、腰からのスカート部分はふんわりとしていて。
アシンメトリーにカットされた淡いブルーの生地の内側に広がるのは数段のフリルが入った同じ色のレースだった。
シンプルな服を好む綾子の印象とは程遠いドレスに身を包みながら睨んでくるちえりに、篤紀はにやけそうになる顔を必死に引き締めながら言い訳をする。
「いや、うちにあったヤツ持ってきただけ」
「社長、兄弟は弟しかいないって言ってたじゃないですか」
「ああ、その弟が持ってたヤツ」
もちろんそんな嘘に騙されるちえりでもないのだが、持ってきてもらった事を考えると、それ以上文句も言えずにため息で逃がした。
そして気まずそうに篤紀を見る。
「申し訳ないんですけど……後ろのファスナー上がらないので上げてもらっていいですか?」
「え……あ、ああ。いいけど」
少し恥ずかしそうにしているちえりの姿に、ごくりと喉を鳴らした篤紀が立ち上がり、ちえりの後ろに回る。
「目、瞑ってくださいね」
「それじゃあファスナーがどこにあるか分かんねぇだろ」
「じゃあ、いやらしい目で見ないでくださいね」