社長に求愛されました
それは無理だろと内心ツッコみながら、はいはいと平然を装ってファスナーに手をかける。
左手でちえりの腰のあたりを押さえて、極力、素肌や薄いピンク色に白い花が細かく刺繍してある下着は見ないようにしジジ……とファスナーを上げきった自分を偉いと思った。
それから、こんな肩の出たドレス選ぶんじゃなかったと、数時間前の自分を後悔した。
選んでいる時は、白い肌のちえりにはぴったりだと思ったしいざ着せてみてもそれは童話に出てくる姫みたいに可憐で可愛いが、こんなちえりの姿を他の男に見せるなんて考えられない。
店員が勧めるまま、ドレスに合せたストールも買っておいてよかったと篤紀がため息を落とす。
「えっ、まさかファスナー上がりませんか? 昨日の夜、おばさんちに帰ったらなんかたくさん夕飯作ってくれてて食べ過ぎたから……?」
「あ、いや。あがった。
つーかおまえの身体で入らない服なんかねぇだろ」
ため息を勘違いして焦るちえりに篤紀がそう返すと、ふくれっ面を向けられる。
「どうせ貧相な身体ですから」
「……気にしてんのか?」
自分の事には無頓着すぎるように感じていただけに、その発言に篤紀が驚くと、ちえりはまぁ少しはと答える。