社長に求愛されました
「ウィッグ。これを地毛に巻きつけておろしておけばいい感じになるって言ってたから。
で、あと控えめな飾りももらってきた」
「なんか……至れり尽くせりで怖いですね」
「おまえは普段俺を頼らな過ぎなんだよ。なんでもやってやるって言ってんのに一度も頼ってこねぇし。
異動の件も嫌がるし」
イライラした様子で髪を触る篤紀に、ちえりは別に責めらるような事じゃないのにと思いながら苦笑いを浮かべる。
ちえりだってそこまで鈍感じゃない。篤紀が自分に特別によくしてくれている事は十分すぎるほど分かっている。
篤紀が本心から自分の力になりたいと思って色々しようとしてくれているのも。
それでも、どうしても甘える気にはなれないのだ。
というよりも。
「人に甘えるのって、どうすればいいのか分からないんです。社長にだけ頼らないんじゃなくて……誰かに頼るって事がよく分からないんです」