社長に求愛されました
会場には100人近い招待客が集まっているが、ちえりたちがいるのは端っこなため会話にそこまで注意する必要はないのかもしれないが、話題に気を付けた方が賢明だ。
周りは白石出版に関係する企業の社員ばかりなのだから。
会場の中央では、白いドレスに身を包んだ花嫁が、横に立つ新郎と他の招待客と楽しそうに会話をしている。
「キレイなドレスですね。花嫁さん、すごく綺麗だし……私こんな近くで花嫁さん見たの初めてです」
ぽーっとしながら花嫁を見つめるちえりに、黒のワンピースを着た綾子が、ワインの入ったグラスを揺らしながら笑う。
「高瀬くらいの年齢じゃまだ周りも結婚する歳でもないしね。
でも個人的には高瀬の方がキレイだと思うけど。
そのドレス、社長のお見立てなんでしょ? さすが」
「派手じゃないか心配だったんですけど……あまり浮いてなくてよかったです。
黒じゃなきゃダメなのかと思ってたらそうでもないんですね」
「黒の方が無難ってだけだから問題ないわ。
かぶって欲しくなかったら、花嫁の方からカラードレスは何色着るからそれ以外でって言ってくるし」
「あ、そうなんですか」
「今日はメイクもちゃんとしてるし髪型も違うし、ホント別人みたい。
それも社長?」