社長に求愛されました


「社長が言ったんですよ。仕事の一環だって。
だから社長もそれ忘れないでくださいね」

大事な仕事相手なんですから。
言葉の裏に隠された意味に気づいた篤紀は、先ほどまでの爆発寸前だった気持ちを無理やり吐き出すようにため息で逃がした。

本当だったら、怒鳴ってやりたかった。ちえりを目の前で傷つけられたのだから黙ってなんかいられるハズがない。
だけどそれをすれば仕事先をひとつ失う事になる。
そんな事は、社員全員に社長失格だと太鼓判を押されている篤紀にとってはどうでもいい事だったが……ちえりはきっとそれを自分のせいだと責めるに決まっている。

ちえりは昨日、自分はバイトだからパーティの場にはふさわしくないとハッキリと断った。
それを、ただ一緒にいたいがために無理やり連れだした自分の考えの浅さに、篤紀が顔を歪める。

……もっと考えるべきだった。
ちえりが傷つかないために、もっと色々な場合を想定するべきだったのに。

激しい自己嫌悪が、篤紀にのしかかっていた。





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