社長に求愛されました
そんなドレスをまとい、篤紀にべたべたと迫っていれば主役のふたりよりももちろん招待客の目を引くし、それはさすがにコンセプトからずれてしまうんじゃないかと思われるが。
そんな和美に対して、父親である白石は注意するどころかご満悦だ。
どうやら白石から見ても、篤紀は和美の夫として合格らしい。
「でも、専務の娘さんのパーティーでそんな裏工作しますかね」
そんな事したら結婚にケチがついちゃうみたいだし、と呟くちえりに、綾子が甘いわと首を振る。
「確かに結婚式となれば神聖な場だし、多少遠慮もするかもしれないけど、今日はあくまでもレセプションパーティーよ。
一応、専務の娘さんの結婚披露が主とはしてあるけど、裏のコンセプトは違うんじゃないかしら。
黒崎社長と和美さんを周知の仲にするため、とかね」
「そっか……。この場で白石社長と和美さんが黒崎社長をお気に入りだって事をアピールしておけば、近づく人も減りますもんね。
それに、そんな態度で来られれば黒崎社長だって曖昧に笑うしかできないし、それを周りは肯定ととるだろうって考えですか」
「既成事実を作っちゃえばもうどうとでもなるって事よね。
多分、黒崎社長がプリンスホテル・Kと関係してるって知ってるんじゃないかしら。だからそんな強硬手段に出てるのかも。
黒崎会計事務所は会計事務所の中ではそれなりに大きいけど、白石出版の社長がそこまで欲しがるっておかしいもの」