社長に求愛されました
完全に寄りかかって、しまいには寝てしまったちえりの身体を支えながら、篤紀と綾子はちえりがどうやってショートカクテルを手にしたのかに頭を悩ませていた。
実はこのショートカクテル、綾子がトイレに立っている間、会場内に設けられたバーカウンターのようなところでちえり本人がオーダーしたものだった。
というのも、オーダーの仕方が分からずおろおろしているうちに、違う招待客がオーダーしたので、それと同じものをとお願いしてしまったのだ。
それがアルコール度数が高いものだとは知らずに。
パーティーが始まる時、乾杯で手にしたシャンパンと、綾子と一緒にオーダーしたカンパリオレンジと合わせて三杯飲んだ事になる。
普段アルコールにまったく慣れていないちえりが酔うのは当たり前だ。
しかも初めてのパーティーという事で緊張も手伝ったのだろう。
「社長、私このまま抜けて高瀬送って面倒見ますよ」
綾子がそう言いながらちえりに手を伸ばすも、篤紀は「いや、いい」とそれを断り、ちえりを胸に横抱きしてしまった。
いわゆるお姫様抱っこだ。
こんな美男美女がそんな事をしていたら会場がざわつきそうだが、幸い、場所が端っこだということと招待客の視線がブーケプルズに集まっている事もあって、そこまで騒がれる事もなかった。
「俺が連れて帰る」
「え、でもこれからブーケプルズですよ。いいんですか?」