恋はしょうがない。~職員室であなたと~
恋はしょうがない。
目の覚めるような人
新たに着任する学校に赴くときは、いつでもかなり緊張する。
親しく一緒に苦楽を共にした同僚たちと離れ離れになり、一人で新しい学校の門をたたく。
新しい出会いに心を躍らせるよりも、知らない人間の中に放り込まれる不安の方が先に立つ。
――私はここで、うまくやっていけるだろうか……
異動がある年は、新居を決めて引っ越しやら着任のあいさつやらで、ゆっくり桜の花を楽しむ暇もない。
けれども、この学校の桜の花の見事さはどうだろう……。
真琴は、思わず正門脇のしだれ桜の老木を見上げた。
春というのに青く澄んだ空に、映えるピンク色のおびただしい花々たち。
桜野丘高校――。
この名にふさわしいと、真琴は思った。
< 1 / 70 >