恋はしょうがない。~職員室であなたと~
恋人はいる?
「先生、古庄先生に訊いてくれた?彼女いるって言ってた?」
授業が終わると、有紀がおもむろに真琴の所へと来て耳打ちした。
そう言われると、頼まれてから随分時は経っているが、そういう話をする機会には未だ恵まれていなかった。
「え…!?古庄先生?うーん、実はあんまり話をすることがなくて」
「えー、どうして?隣の席同士じゃん。何で話さないの?」
「職員室にいるときだって、遊んでるわけじゃないからね」
「何で」と訊かれても、席に着いている時にはお互い自分のやるべきことをやってきて、視線を合わせることなどほとんどない。
それでも着任当初は、古庄も気を遣っていたのか、いろいろと真琴に他愛もないことを話しかけていた。
しかし、真琴の方が話に乗らずに、短い受け答えしかしないものだから、いつしか二人の間には会話というものが存在しなくなった。
「いるんじゃないの?彼女。古庄先生、あんなにカッコいいから、女の人が放っとかないでしょ?」
真琴はそう言いながら、古庄の人並みより少し高めの身長とラグビーで培われたであろう均整のとれた体格、そして端正な顔が作り出す極上の笑顔を思い出していた。
あの笑顔を思い出す度に、心の底の方がもやもやとして落ち着かなくなる。