恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「えええ~っ!!やっぱりそうかなぁ?古庄先生の好きになる人って、どんな人なんだろう?…ああ、ダメ。想像しただけで、落ち込んじゃう」
そんなことを話しながら、有紀は真琴にくっ付いて職員室までやってきた。
有紀の目的はただ一つ、真琴の隣の席の古庄に会うことだ。
「ほら、いろいろ心配するより、古庄先生に自分で訊いてみたら?」
真琴が有紀にそう声をかけると、古庄も自分の名前が出てきたので、何事かと視線をよこした。
しかし、有紀は真琴の背中へと回り込み、顔を真っ赤にして恥ずかしがるばかりだ。
「有紀ちゃん、古庄先生に彼女がいるのか、知りたいんですって」
「もう!ヤダー!!先生~」
有紀は恥ずかしさのあまり、今にも泣きだしそうな声を出す。
毎日、古庄の周りにたむろする女子たちに比べて、有紀のこの反応は随分奥ゆかしいものだった。
「…彼女?いやぁ、そんなもんは、このところ何年もいないなぁ~。独身の三十路男、寂しいもんだよ」
そう言いながら、古庄は少し苦い笑顔を作り、真琴へとそれを向ける。
真琴はとっさに、古庄から視線を逸らした。
この笑顔を見るとぞわぞわと鳥肌が立って、真琴は途端に古庄の近くにいるのが心地悪くなってしまう。
「…だって、よかったね。有紀ちゃん」
「よかったねって、ヤダぁ、もう…」
有紀は真琴の背中から、古庄の顔をチラリと見て再び目を伏せながら、そう絞り出した。
「さあ、俺に訊いたんだから、賀川先生にも訊かなきゃな」