恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「最終日だと思ってたから、この週末に問題を作ろうと思ってて……」
真琴は答えながら、日々の業務に追われて大事な仕事を後回しにしていた自分が悪いんだと、後悔していた。
――どうしよう…。どうしよう…。どうしよう…!
真琴の鼓動が次第に激しくなってくる。
資料を自宅に持ち帰って作問して、明日早く出勤して印刷すれば、間に合うだろうか……。
それでも、問題の中に必ず入れる写真などをコピーしたりすることは、スキャナもプリンターも持っていない真琴が自宅ですることは不可能だ。
どうやっても、帰宅してからの作問は1時間目の考査には間に合わないと確信したら、真琴の動揺はいっそう強くなり、机の上のプリント類を整理する手が震えているのが、真琴自身にも自覚できた。
「…大丈夫。明日の朝気が付いてたんならアウトだったけど、今から作れば!」
古庄は楽天的なことを言って励ましてくれていたが、真琴の耳には届いていなかった。
真琴は古庄の方を見ることもなく、自分のノートパソコンを開く。
職員たちは一人二人と帰宅し、真琴の周辺には誰もいなくなってしまった。
作問に没頭していた間、とっくに古庄もいなくなっている。
ふと顔を上げて見回してみると、いつも遅くまで残って仕事をしている3年の学年主任がいるだけだった。
気を取り直して、真琴は再びパソコンへと向かう。
普段なら2、3日かけて一つの考査を作り上げるのだが、それを一晩でやり遂げようというのだから、一刻の猶予もないはずだ。