恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「賀川先生、地歴公民科の資料室に問題集の見本がたくさんあったから、参考にしてみたら?」
とっくに帰宅していたと思っていた古庄が、真琴の机の上に10冊程度の問題集を置いた。
それぞれに見本というシールが貼ってある。
これは出版社から営業のため、学校に送られてくる問題集の見本だ。
思わず真琴は、脇に立つ古庄を見上げた。
「初めから全部作るのは大変だろ?こういう問題を雛型にすれば、作りやすいと思うんだけど」
「……そうですね」
真琴はお礼を言う余裕もなく、問題集を次々に開いてみた。
これまで幾度となく考査問題は作ってきていて要領は得ているのだが、それぞれの学校の学力や考査範囲などはその時で違うので、過去に作った問題を使いまわすことは難しかった。
その時、3年部の学年主任から声をかけられる。
「遅くまで頑張るね。私は先に帰るけど、帰る時に消灯、忘れないように」
「はい」
「お疲れ様でした」
真琴と古庄は口々に学年主任に向かって答える。