恋はしょうがない。~職員室であなたと~
二人きりの夜
時計の針が9時を指し示す頃、古庄が大きなため息を吐いた。
「ああぁ~…。さすがに腹が減ったなぁ~」
そう言われても、何も夜食になるようなものもないし、店屋物を取ることも不可能なので、どうすることも出来ない。
「すみません……」
――……やっぱり帰ってもらった方がよかった……
あまりの申し訳なさに真琴は謝りながら、心の中では裏腹のことをつぶやいていた。
真琴は、人に迷惑をかけるということが嫌いだった。
ましてや、一緒にいるだけで息苦しい古庄に対しては、なおのことだ。
しかし、古庄が真琴の謝罪を聞いて、逆に申し訳ないような顔をする。
「いや、ごめん!別に賀川先生を責めてるわけじゃなくて。残ったのは、俺の意志だし。……そうだ!」
古庄は何か思いついたように席を立って、同じ学年部の戸部という教師の机へと向かった。
「確か、戸部先生はここに非常食をストックしてあるはず……」
と言いながら、戸部の机の引き出しを開けて中のものをかき回している。
真琴は何をしているのかと、目を丸くして古庄の行動を見守った。