恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「ほら!あった!!」
古庄は両手にそれぞれカップラーメンを掲げて、真琴へと誇らしげに見せた。
「……古庄先生。それをいわゆる、泥棒…っていうんじゃないですか?」
喜ぶでもない冷静な真琴の指摘を受けて、古庄は眉を動かして言葉を逸した。
だが古庄は、すぐに白い歯を見せてまぶしく笑った。
「大丈夫。後で、買って返しとくから。とりあえず、これ食べてこの空腹をしのがないと」
片目をパチンと瞑りながら、古庄は足取り軽く給湯室へと向かう。
古庄の悪びれない行為よりも、その無邪気な笑顔から放たれる光に気圧されて、真琴はもう何も言えなかった。
「出来たら呼ぶからね」
と、給湯室から、古庄の明るい声が職員室に響き渡る。
それから二人でカップラーメンをすすり、真琴が少し気を利かせてお茶を淹れた。
いつもの古庄なら、何かしら話題を持ち出すのだが、疲れているのか、それとも普段真琴が気のない返事ばかりしているからか、今は黙ってお茶を飲んでいる。
真琴は、古庄に対して素っ気ない態度をとってきたことを、今更ながらに後悔した。
思い返してみれば、邪険にしていたとさえ言ってもいい。
それでも、古庄はいつも変わらず真琴に明るく接してくれた。