恋はしょうがない。~職員室であなたと~
すべての作業が終わったときは、午前1時を回っていた。
「……古庄先生、ありがとうございました。本当に助かりました」
改めて、真琴は深々と頭を下げた。
きっと一人でやっていたら、朝までかかっていただろう。
古庄は唇を噛んで微笑み、何も言わないままで肩をすくめた。
決して好意を押し付けるわけではなく、見返りを求めるでもない。さりげなく助けてくれる古庄の態度は、本当は一緒にいてとても居心地のいいものかもしれない。
女子生徒たちをはじめ、女性たちのほとんどは、古庄の完璧すぎる容姿を見て、瞬時に心を奪われる。
真琴は逆に、その様に圧倒された。
古庄に群がる他の女性と同じように思われたくない一心から、これまでずっと古庄を避けてきていた。
でも、それも所詮、自分も古庄の表面的な部分しか見ていなかったのだと、真琴は自覚した。
「さあ、明日は考査もあるけど、先生は島田のこともあって大変だろ?オートロックが解除される7時まで、できるだけ眠ったほうがいいな。俺はテレビ部屋のソファーを使うけど……」
テレビ部屋というのは、かつては喫煙室として使われていた部屋だ。
今でもタバコの臭いが染みついているし、男性教師の溜まり場なので、真琴は足も踏み入れたこともない。
「私は、女子休憩室を使います」
渡り廊下に面する小さな1室を、真琴はほとんど使用したことはないが、確かそこにソファーがあったことを思い出していた。