恋はしょうがない。~職員室であなたと~
鋏を使って丁寧に、招待状の封を切る。
縁をレース状にカットされた可愛らしいカードを開いてみて、結婚式の日時と場所を確認する。
そして、静香の相手の名前を見て、真琴は自分の目を疑った――。
「古庄 和彦」
まぎれもなく、毎日職員室で真琴の隣に座っている古庄の名前だ。
よくある名前でもないので、同姓同名の別人ではないだろう。
「すっごくカッコいい」という静香の言葉も、それを裏付けている。
真琴の鼓動が大きく速く、乱れてくる。
手が震えて、カードを足元へと落としてしまった。
そのカードを拾いながら、真琴の中にさまざまな思考が浮かび上がる。
静香はどこで古庄と知り合ったのだろう。
静香と古庄の前任校を思い出しても、二人に接点などは思い当たらなかった。
――……それに、古庄先生は、彼女はいないって言ってたし、結婚のことなんて何にも言ってなかった……
その戸惑いは、真琴の心を少しずつ蝕んでいく。
古庄にとって自分は、そんなプライベートな話をするに足りる相手ではなかったということだろうか……
いくら考えても答えが出るはずもなく、いつしか真琴の頬を、涙が伝っていた。