恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「どうしたんですか?」
ただ事ではないような古庄の表情に、さすがの真琴も何かあったのかと、辛い私情を忘れて声をかけた。
けれども、古庄は事の状況を説明するどころか、真琴の腕を掴んだまま、口を一文字に結んで真琴の顔を見下ろしている。
真琴が困惑の色を浮かべると、古庄は思い切って口を開いた。
「……どうして、俺のことを避けてるんだ?」
その言葉が、ズキンと真琴の胸に突き刺さる。
いつもは朗らかな古庄の険しい表情を見上げて、怒っている――と直感した。
古庄が怒るのも無理もない。
真琴はこの2週間、そう思われて当然の態度を取ってきた。
一緒に働く同僚にこんな態度を取り続けるのは、業務の支障にもなりえるだろう。
避けている理由――。
本当のことが言えたら、どんなに気持ちが楽になるか分からない。
だけど、それを言うことは、真琴の慕情を打ち明けることになる。
その真琴の本心を打ち明けても、結婚を間近に控えた古庄を困らせてしまうだけだ。
真琴は唇を噛んで、言葉を探した。
「……別に、古庄先生のことを避けてなんかいません」
シラを切るような卑怯な言い方だと思ったが、真琴はそう言って首を横に振った。
しかし、そんな言い逃れは古庄には通じない。