恋はしょうがない。~職員室であなたと~
真琴の心を占拠したのは、古庄と想いが通じ合っていた喜びよりも、静香の存在だった。
「……古庄先生。結婚するんですよね?」
自分の懐から発せられた真琴の言葉に、古庄はピクリと反応する。
抗っても離してくれなかった手の力が抜け、真琴は古庄の胸に手を突いて、二人の間に距離を置いた。
「……どこで、それを……?」
他の誰も知らないことを、どうして真琴は知っているのか……。
古庄にしたら、当然の疑問だった。
「先生のお相手の芳本静香さんは、私の友人なんです。お式の招待状も、頂いてます」
真琴が真実をすべて知っていることを覚って、古庄は言葉をなくした。
唇を噛んで、切ない目で真琴を見つめている。
「結婚する前には、男の人も気持ちの揺れることがあるって、聞いたことあります。一時の気の迷いで、こんなことしない方がいいです……」
真琴は、そう言いながら心の中では反対のことを叫んでいた。
本当は自分も古庄を心から想っていると――。
本当に自分のことが好きなら、静香との結婚を止めてほしいと――。