恋はしょうがない。~職員室であなたと~
「本当は好きになった人と結婚したいと思ってたけど、この歳になるまでそんな人には出会えなかったし、男の独り身は生活も荒れるから、そろそろ身を固めるころかなと、自分の中では納得していたつもりだったんだ……」
そこまで語った古庄は言葉を切り、いっそう切ない目で真琴を見つめる。
「……だけど、君に出会ってしまった。君は、俺が初めて、自分から本気で好きになった人だ……」
古庄は、あれだけ女性に囲まれ想いを掛けられているのに、本当に今まで本気で女性に恋したことがないのだろうか。
上辺だけの自分に恋をされることが多過ぎて、本気で人を好きになることがどういうことか、分からなくなっていたのだろうか。
素直な性分の古庄は、ストレートに自分の気持ちを表現し、真琴へとぶつけてくる。
愛しい人からこんな風に告白されたら、本来なら無上の喜びに身を投じられる。
けれども、真琴は混乱して、それにどう応えていいのか分からなかった。
「……どうして今になるまで、何もしなかったんですか?」
そして、不意に真琴の口を衝いて出てきたのは、その言葉だった。
もう結婚式まで、1か月しかない。
静香は何も知らず着々と、式の準備を進めていることだろう。